竹本 弥生

ワークレポート

あこがれていた宇宙への想いを原動力に、宇宙開発の一翼を担う。

国際宇宙ステーションで用いる機器を担当。

高度400kmに位置する国際宇宙ステーション(ISS)。その中でも最大規模を誇る日本の実験棟「きぼう」の環境制御系と機構系の開発に、川崎重工は初期段階から関わっています。私自身は、打ち上げ後の運用フェーズから携わることとなり、現在は主に、船内と船外で物を出し入れする「エアロック」の運用支援や、その高機能化に対応するプロジェクト業務を手がけています。エアロックの運用支援では、月に1〜2度のペースでJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙ステーション運用棟へ出向き、クルー(宇宙飛行士)が エアロックを動かす際に地上からモニタするなど、技術的なサポートを行っています。

また一方で、新しい宇宙機器の開発業務も担当しています。2015年には、私が設計に関わった簡易曝露実験装置「ExHAM/エクスハム」による実験が、ISSでスタートしました。ExHAMは、高真空や放射線といった宇宙特有の環境が物質に与える影響を評価するための実験装置で、ちょうど40cm角の箱のようなものです。従来の装置ではクルーによる船外活動が必要だったため実験の機会も限られていましたが、ExHAMではロボットアームによる自動セッティングを実現し、船外活動を不要にすることで、実験機会の頻度向上に貢献できました。

自分が設計を手がけた機器が宇宙へ。

開発から運用まで10年を超えることも珍しくない航空宇宙分野にあって、ExHAMは物が小さかったこともあり、開発着手から運用開始まで4年程度でした。そのため、設計初期から試験、納入、打上、運用まで一貫して製品に関わることができました。ExHAMはISSの外側に付いているハンドレール(取っ手)に取り付けられるようにするのですが、ハンドレールの形状も、取り付け時に使用するロボットアームのインターフェースもすでに決まっているため、それに合わせて設計する必要があります。また、打ち上げ時のロケットの振動にも耐えられる構造でなければなりません。さらに難しいのが、宇宙空間という厳しい使用環境への対応です。ISSは一日に16回も昼夜を繰り返しますが、その船外温度差は実に±100度。そのため耐久試験では、真空を作り出す特別な試験装置の中にExHAMを入れ、使用環境よりもさらに厳しい温度で試験を実施しました。

そうして開発したExHAMは、私たちの希望とともに宇宙へと届けられました。初めてのExHAM取り付けにあたっては、私も開発担当としてJAXAに赴き、宇宙から届く定点カメラの映像をリアルタイムで見ていました。地上実験はクリアしているものの、実際の宇宙空間では予期せぬ不具合がないとも限りません。 どきどきしながら祈るように見守る中、ロボットアームが問題なくExHAMを取り付けたのを確認したときには、「やった・・・」と思わず胸に熱いものがこみ上げてきました。

日々の業務の先に夢がある。

幼い頃から宇宙にあこがれ、中学1年で「宇宙飛行士になりたい」とNASDA(現 JAXA)に資料請求をした私は、縁あって今、宇宙に関わる仕事に就くことができました。普段の仕事の中には苦労することもありますが、そうした日々の業務の先に夢があることが仕事の原動力になっています。自分の携わった機器が宇宙に打ち上げられ、クルーが機器を使ってミッションを成功させたとき、また、地球に戻ってきたクルーから使用感を直接聞いたとき、あこがれだったものが現実へとつながります。そして、末端であっても宇宙開発の一翼を担っていることにやりがいと喜びを感じます。

今はまだメインの設計を上司が手がけ、私はそのサポートをしている状態ですが、いつか「これは自分がつくった」と堂々と胸を張って言える宇宙機器を開発するのが夢です。そして、宇宙ステーションに続くような次の宇宙開発プロジェクトに携わっていきたいと思います。