原 宗竜

ワークレポート

地球とモーターファン、両方を笑顔にする理想の二輪車を開発する。

究極のロードスポーツをつくる──。
初めてづくしだった「Ninja H2」の開発。

Kawasakiの二輪車との出会いは、私が18歳のときでした。当時、バイクに夢中になっていた私に、先輩が「こいつに乗れよ」と1台のバイクを譲ってくれました。それが他でもないKawasakiだったのです。その後、電気系の道に進んだ私は、「自分のつくったバイクが街中で走っている姿を見たら最高だろうな」という想いから、川崎重工のモーターサイクル&エンジンカンパニーを志望しました。

入社して3年間、二輪車の電装関係の電気回路設計を担当した後、電装の実験担当としてテストや評価を行う業務に就きました。このとき手がけたのが、究極のロードスポーツと称される「Ninja H2」の開発です。革新的な技術をいくつも採用した「Ninja H2」は、エンジン、車体、電装、どれをとっても初めての試みばかり。しかも私にとっては、実験部に異動して初めての担当機種とあって、まさに初めてづくしの仕事でした。

今までにない機構をふんだんに取り入れた車両だったため、従来の方法では正しく評価できず、私はさまざまな技術情報を調べたり、機械やソフトウェアの専門家に意見を求めたりしながら、試行錯誤を重ねて新たな評価方法を構築しました。苦労は多かったものの、発売後、市場に絶大な支持を得られたこともあり、大きなやりがいを感じられた開発案件でした。

相反するふたつの要素、
「環境性能」と「ドライバビリティ」を両立させる。

現在は、エンジンのセッティング担当として、二輪車のECU(エンジン・コントロール・ユニット)の開発を手がけています。テーマはずばり、「環境性能」と「ドライバビリティ」の両立。現代において二輪車を開発する以上、環境性能は避けて通ることのできない大命題です。一方で、二輪車という製品の性質上、パワー感や操縦性など「乗っていて楽しい」と感じてもらうための「ドライバビリティ」も譲れません。ところが、この2つは基本的に相反する要素でトレードオフの関係にあります。そこで、コンピュータを用いてパラメータ設定を巧みに調整することにより、ベストな落としどころへ着地させ、両者の両立を実現するのが私の仕事です。

この課題は、現代の二輪車開発において非常に重要な部分を占めているため、やりがいと責任感を持って仕事に取り組んでいます。

自分が学生時代に味わったバイクの楽しさを
少しでも多くのお客さまに感じていただきたい。

学生時代は、アルバイトをして貯めたお金で小さなバイクを買い、ツーリングしたり改造したりして楽しんでいました。そのときは、まさか自分がつくり手側にまわるとは思ってもいませんでしたが、あのときの楽しさをお客さまにも味わっていただきたいという想いが、今の私の仕事に向かうモチベーションになっています。

次、また次と、量産機種のECUを開発中ですが、世界中で環境基準が厳しくなる中、開発のハードルは高くなるばかりです。しかしそれでも、しっかり乗り越え、車両価格に見合う以上の価値を感じていただける二輪車を世に送り出すことが、私たち開発者の使命だと思っています。そしていつか、二輪車に興味のない人も引きつけるような、漫画やアニメで出てくる近未来的なバイクをつくることができたら、言うことはありません。