挑戦者ファイル

07 進士 禎一郎 ガスタービン・機械カンパニー 機械ビジネスセンター 水力機械部 推進機設計課 機械科学専攻 2006年入社

異国で培った度胸と判断力。信念を持って駆け抜けた激動のプロジェクト。

現地で求められる即断即決
海外駐在経験を活かし乗り越える。

「日本に電話をかけるな」

2013年4月、シンガポールで行われたミーティングの初日。現地スタッフから発されたその言葉に進士は奮起した。シンガポールの企業から依頼されたオフショア支援船へ搭載する「レックスペラ」を製造するプロジェクトでの出来事だ。

360°自在に推進力を得ることができる舶用推進機レックスペラ。その詳細設計を初めて担当した案件だった。レックスペラは製品の特性上、船ごとに要求も仕様も異なる。さらに進士が担当した今回のケースでは制御装置の大半が外部メーカーのもの。川崎重工のレックスペラとスムーズに連動させるためにはシステムを変えなければならない。入社以来、同じ部署に所属していたとはいえ詳細設計に携わる初めての案件、検討や結論を出すのにも時間がかかる。もどかしさが進士を襲っていた。

そんな中行われたミーティング。クライアント、外部メーカーの担当者、そして川崎重工からは進士と営業担当の二人が出席した。ここで話をつけ、設計を進めていかなければならない。正念場だ。設計の代表は自分ひとり。とはいえ初めての設計業務ということもあり、どうしても日本へ電話をかけて同僚に助言を求めたい場面も出てくる。しかし、シンガポールと日本ではミーティングに対する考え方、姿勢も異なる。ミーティング中、不明点を確認するため会社の同僚に電話をかけるということは日本ではごく普通に行われることであるが、その行為により会議が中断されたことで「集中力が切れてしまった」と、その場から離れてしまう現地スタッフもいた。「このままではダメだ、ミーティングが成立しない。自分の意思で判断しなければ」。進士はそう決意した。

この時役立ったのが入社4年目から7年目まで、オランダの関係会社に出向した経験だ。水力機械部からは初めての出向。さらに、オランダと日本では時差があるため、基本的にはすべて一人で対応しなければならない。ヨーロッパ各国の顧客とやり取りをし、分からないことは何でも何度でも聞くということに物怖じしなくなった。国によって対応も考え方もちがう、臨機応変な対応と度胸が身についた。そんなオランダでの自身の成長、それを今回のミーティングで最大限発揮した。さらに進士を後押ししたのが川崎重工の社風だ。現場に権限があり、仕事を任せてもらえる。自分の意思で決定し、進めていくことに迷いはなかった。

次々に降りかかる困難
信念を持ち立ち向かう。

無事、困難を乗り切ったかのように思えた進士を待っていたのはさらなる困難だった。船には規格があり、それをクリアするためには厳しい審査を通らなければならない。膨大な書類、数年おきに改正される規格。そのすべての審査を通らなければモノが出来ない。後工程を受け持つ他部署にも迷惑をかけてしまう。焦りが胸に去来する。今まで随分待たせてしまった、もうどこにも迷惑をかけるわけにはいかない。進士は問題を一つずつ着実にクリアしていった。

進士には信念がある。自分で考え、理解、納得してから行動すること。それがエンジニアとして成長するために必要不可欠だと常々考えている。慣れない詳細設計業務の中でも、理解できないまま業務を進めるわけにはいかない。レックスペラはいわばセミオーダーの製品だ。細部にわたり、仕様が異なる。一つの不理解が不具合に繋がり、後々、どんな問題を生むか分からない。そうなればさらに迷惑をかけることになる。信念を貫き、慎重に仕事を進める進士を周囲は見守ってくれた。彼らの想いになんとしてでも応えなければならない。その想いが進士を突き動かしていた。

審査も無事に通り、あとは工場での試運転を待つばかり。そんな進士にまたもやトラブルが降りかかる。油圧回路の油の分配の計算に時間がかかってしまい、結果、当初の予定とは異なる部品を使わなければならなくなった。既に組んでいる配管を組み直してもらわなければならない。当然、簡単な作業ではない。謝罪する進士に現場のベテラン作業員が言った。「出荷される前なら何回でも組み替えてやる」。その言葉に胸が熱くなった。思えばこのプロジェクトが始まって以来、周りの助けを得ながら日々を送っていた。図面に指摘してくれる人、困難に直面したときにアドバイスしてくれる人。自分で考えて動く、その信念は周りの協力があるからこそ貫けるものだ。そう気づいた瞬間だった。

そして2013年9月。ついに製品が完成した。やっとの思いで迎えた工場試運転の日。「これが完成したらどんなに嬉しいだろう」。プロジェクトが始まって以来、ずっとそう考えていた。しかし当日、進士の胸にあったのは少しの安堵とこれからへの思いだった。「やっとここまで漕ぎ着けた、でもレックスペラはまだ船に載っていない。まだ安心はできない」。同時進行で動かしている他の案件もある。立ち止まるわけにはいかない。前を見て進まなければならないのだ。

学生時代の私

ボート部に所属し、ひたすらボートに打ち込んだ学生時代を送りました。練習の中で漕力の計測ができるエルゴメータという機械を用いたタイムトライアルがあるのですが、あまりの厳しさに途中で漕ぐことをやめてしまったことがあります。
その時、当時のヘッドコーチから「誇りを持って漕ぎ続けろ」という叱咤をもらいました。「誇りを持って何かをする」、「自分のやることに誇りを持つ」という感覚をその時初めて学びました。その経験から、誇りを持ち、誇りを持てるモノづくりをしたいと思っています。

入社の決め手

最初は鉄道車両に携わりたくて入社を志望しましたが、面接でボートのことばかり話しすぎたのか、配属先は今の部署でした。当初は落胆しましたが、舶用推進機の製品としての面白さ、世界中の顧客と仕事ができるという醍醐味、若手にどんどんチャンスを与えてくれる所属の雰囲気など、現在の配属先でよかったと思っています。
入社11年目となった今、仕事の面白さは与えられるものではなく、自らの工夫次第で仕事を面白くすることができる段階になってきていると感じています。

チームメンバーから

小池 弘晃

ガスタービン・機械カンパニー
機械ビジネスセンター 水力機械部 推進機設計課
2009年入社

小池 弘晃

Hiroaki Koike

ポジティブで面倒見のいい青年です。

進士さんとは、同じ部署でともにレックスペラを担当しています。私はキャリア採用で、進士さんには入社時に指導員としてお世話になりました。ポジティブ思考で、常に積極的に業務に励むのが、進士さんの良いところ。海外現地法人での駐在員を経験しているためか、人とのコミュニケーション能力に長けているように思います。今も、新入社員の指導員を務めていますが、ていねいに指導している姿をよく見かけます。