挑戦者ファイル

02 岡田 邦夫 本社技術開発本部 技術研究所 熱システム研究部 研究一課 工学部 総合理工学研究科 メカノマイクロ工学専攻修了 2011年入社

世界最先端のドイツの工科大学へ。世界が待ち望む技術を目指して。

素人同然で臨んだ初海外出張&初燃焼試験。
現地の大規模試験設備を前に覚えた高揚感。

「あなたはいったい何語なら話せるの?」

2011年9月、ドイツ・アーヘン。ファストフード店で注文すらままならず、スタッフの女性からそうあきれられた岡田は、苦笑いで答えるしかなかった。

岡田が担当しているのは、火力発電設備に用いられるガスタービンのキーハードである燃焼器の研究開発だ。NOx(窒素酸化物)低減や燃費向上といった環境性能や、過酷な使用環境における耐久性の向上などガスタービンの実ビジネスを支援(※1)するだけでなく、将来の水素を燃料とする水素燃焼技術の確立についても研究開発を進めている。

そうした業務の一環で、入社1年目からドイツ出張を経験した。行き先は、ガスタービンや蒸気タービンの分野で世界最先端の研究をしているアーヘン工科大学。実際のエンジンと同じ高温・高圧の厳しい条件下で、燃焼器の性能を評価するためだ。とはいえ、5月に本配属となってわずか4カ月。燃焼技術では素人同然で配属され、前準備も専門知識も経験もないまま「ま、勉強だから」と出張を言い渡された。英語も苦手なら、現地で何をするかもわからず、とまどいの中で岡田はドイツへ向かった。

OJT指導員の堀川と2人でアーヘン工科大学の試験場を訪れた岡田は、思わず目をみはった。「規模が違う・・・」。まず試験設備そのものがケタ違いに大きい。関わるメンバーも多く、教授や助手以外に、設備をケアする専属のワークショップメンバーまでいる。さらに隣接して、試験装置を自前で製作する加工場も完備するという充実ぶりだ。「ここで試験ができるのか・・・」、現地メンバーと握手を交わしながら、岡田は技術者としての高揚を抑えられなかった。

現地滞在は2週間。初日は、何時間も英語で試験内容のレクチャーを受け、正直、ついていけずに頭がもうろうとした。そして燃焼試験。岡田にとっては初めての燃焼試験が海外の地となった。そうして、自身では「結局何もできなかった」という初出張が終わった。

それからほどなく、インターンシップとして来日したアーヘン工科大学の学生の世話を岡田らは担当した。数カ月の間、課の業務を経験してもらうほか、休日には姫路城などの観光地を案内したり、一緒にバッティングセンターを楽しんだりと、岡田は進んで世話を焼いた。歳が近いこともあり、いろいろ話をするなかで、ドイツが近く感じられるようになった。

3年目の出張で試験のメイン担当を拝命。
過酷な負荷をかけられた燃焼器を制御できるか。

2年目の夏、再びドイツへ。明石で少なからず試験経験を積んだ岡田は、現地での燃焼器の組み上げ(※2)を担当。とまどいと無力感に終わった1年目の出張とは見違え、4週間に及ぶ出張を充実感とともに過ごした。

そして3年目となる2013年9月。ドイツ・アーヘンの地を三度踏んだ岡田は、かつてないモチベーションで試験場に向かった。「今年は燃料操作をやってもらう」、堀川からそう告げられていたのだ。燃料操作とは、試験用の燃焼器に送り込む天然ガスを制御する作業で、試験の成功を左右する最も重要な担当業務である。つまり、これを問題なくやり遂げれば、一人前というわけだ。

燃焼器をセットし、いよいよ試験スタート。設定する試験条件は、燃焼器にとってかつてないほどに過酷なものだ。緊張が走る。温度、圧力、流速など、さまざまな数値をにらみながら、目指す定格条件まで出力を上げていく。燃焼器内に生じる火炎の温度は2000度にも達する。温度ばかりを上げると燃焼器が焼け溶けてしまう。また万が一、火が消えているのに燃料を送り込むと爆発する危険性もある。

慎重に作業を進める岡田には、緊張の中にも「できる」という確信に似た自信があった。素人同然で配属されてから約2年間、求められる職責以上を何とか果たそうと研鑽に努めた。まずは試験設備を知ることから。空気、燃料、水と、さまざまなラインが複雑にからみ合う設備構造を根本から理解しようと、参考資料をひもとき、先輩に聞き、あるいは事業部門の人にも教えを請うた。そして徹底的に設備を、また事象を観察した。そうやって知見を蓄えるとともに、今回の出張に際しては、燃料操作を担当するにあたり、試験手順を頭にたたき込んだ上でイメージトレーニングまでして臨んだのだ。できないはずがない──。

その積み重ねに支えられた自信を胸に、岡田は期間中に計画していたすべての条件について燃料操作を無事やり遂げた。「お疲れさん」と肩を叩いた堀川の笑顔を見て、一人前の研究開発員として、やっとスタート地点に立った気がした。

東日本大震災以降、火力発電所の存在意義が高まっており、岡田自身、社会や会社から寄せられる期待の大きさを強く感じている。社会の課題を解決し、「これから」を担う技術を生み出すのが技術開発本部のミッションであり、必ずそれを達成してみせる。3度目のドイツ出張の前にはおぼろげだったゴールが、今の岡田にははっきりと見えている。

  • ※1)実ビジネスの支援=実際の顧客に提供するガスタービンでの各構成機器の設計・開発支援。具体的には、各種アイデアを盛り込んだ燃焼器について、レーザーなど特殊計測機器を用いた空気の流動や燃料噴霧の計測・評価、数値解析技術(CFD)を用いた現象の予測だけでなく、実際に燃焼試験などにより性能確認に取り組んでいる。
  • ※2)現地での燃焼器の組み上げ=さまざまな設定の試験を実施するため、日本から運んだ燃焼器を、現地で試験内容に合わせて調整しながら組み上げる作業。その後、試験設備にセットする。

学生時代の私

部活動やアルバイトをしていましたが、よく人から怒られる経験がありました。自分が悪いことに対して怒られることももちろんありましたが、誤解によって怒られたことも多くあります。集団行動をしていく上で、自分の意図や行動を回りの人にわかるように示していくことの大切さを学びました。現在も円滑にコミュニケーションをとれるように、自分の意思をこまめに伝えることを意識して行動しています。

入社の決め手

自分が開発したものが多くの人たちの生活に役立っていることを実感したいと思っていたため、生活に欠かせない、陸海空にまたがる輸送機や発電機器を数多く開発している川崎重工を志望しました。現在では、外出しているときでも、家の中にいるときでも、川崎重工の製品を常に感じることができ、川崎重工業の偉大さとありがたみ、仕事に対する誇りや喜びを感じる毎日です。

OJT指導員から

堀川 敦史

技術開発本部 技術研究所 熱システム研究部 研究二課
2002年入社

堀川 敦史

Atsushi Horikawa

3年で一人前に。
そして、さらなるチャレンジ。

岡田君には入社初年度から海外業務にも携わってもらっています。共同研究先であるアーヘン工科大学から迎えたインターンシップ学生の面倒もよく見てくれて助かっています。業務については、着実に成長できるよう徐々にハードルを上げて任せていますが、しっかりついてきているので頼もしいですね。

技術開発本部ではさまざまな研究開発テーマを手がけていますが、ガスタービン燃焼器の開発は危険も伴い難しいテーマの1つで、アーヘン工科大学との共同研究は社外の研究機関と連携しながら成果が上がっている例として社内でも注目されています。さらに、現在の天然ガスより環境負荷が小さく将来に向けて活用が期待されている水素を用いる燃焼技術の開発を進めています。これが確立できればCO2排出と燃料コストの両方を削減できることになります。非常に意義深いテーマであり、これからも岡田君とともにチャレンジを続けたいと思います。