挑戦者ファイル

10 中尾 孝明 精密機械カンパニー 生産本部 生産技術部 生産技術二課 理工学研究科 機械システム工学修了 2011年入社

高い生産性を誇る未来の工場構築へ。執念で挑んだ緻密な工程改善。

現在3本あるラインを一本化。
求められたのは、試運転時間の飛躍的な短縮。

「生産能力を日産300台から600台へ?!」

油圧モータの工場再編プロジェクト。その打ち合わせの場で、目標とするゴールを告げられた中尾は、「これはたいへんなミッションを背負うことになった」と、自らが目指す頂の高さに目もくらむ思いだった。

油圧モータの生産ラインは増設を重ねたことにより、複数のラインで構成され、一つは建屋も異なる。部品の流れやモノの管理などを考えると、望ましい状況とは言えないことは以前から指摘されていた。そこで、コスト競争がますます厳しさを増す中、ついに現在3本あるラインを一本化し、飛躍的な生産性向上を実現しようというプロジェクトが立ち上がったのだ。

実現に向けた大きな課題の一つは、試運転設備。油圧モータは、組み立てを終えると、運転台に乗せて配管などもろもろの設備とつなぎ、実際に規格通りにモータが回転するかを試験しなければならない。現状、4機の試験設備で日産300台ペースで試験を実施しているが、それを6機で600台まで引き上げようというのだ。その試運転工程改善プロジェクトの主担当となったのが中尾だった。

単純計算で、試験設備1機あたりの試験台数を75台から100台へ。そのためには、モータ1台にかかる試運転時間を短くするほか手がない。とはいえ、すでに同様の検討を重ねて今に至る試験方法を、ドラスティックに変えることなど難しい。中尾は、6種からなる運転試験一つひとつの手順をひもとき、緻密に分解しながら根気強く時間短縮の糸口を探っていった。普段は細かいことはあまり気にしない性格の中尾だが、今回ばかりは些細な見逃しが命取りになる。これまで見過ごしていたどんなに小さな改善点も、すべて取り組む執念深さで臨んだ。

中には、中尾ならではのアイデアと知見で試験時間短縮につなげた検査手順もあった。モータを約1000回転に維持した状態で計測する試験だ。モータの回転数を一定に落ち着かせるには、相応の調整時間を必要とする。従来は必須時間と見られていたこのプロセスにも、中尾はメスを入れた。実はかつて中尾は別の業務で、モータの回転数制御について大学と協同研究をしていた経験を持つ。そこで培った技術が活かせるのではないかと考え、応用を試みた。ねらいはみごとに当たった。中尾が考案した制御法は、調整時間を飛躍的に短縮させた。

こうした地道な取り組みを積み重ねることにより、計算上は日産600台を達成できるはずだった。しかしそこには、中尾の行く手を阻む意外な落とし穴が待っていた。

一つ改善を試みると、また一つ別の問題が起こる。
でも、それを解決する以外に道はない。

試運転に要する時間は確かに短縮できた。だが一方で、その副作用として試験の合格率が下がり、再試験が多発するという事態が起こったのだ。現場からは「かえって時間がかかっているじゃないか」と突き上げを食った。現場の担当者にしてみれば、一日一日の生産台数が勝負だ。「再編に向けたプロセスだから」という言い訳は通じない。中尾は責任を感じながら、すぐさま原因を調査した。すると、試運転時間を短縮したことにより、油圧モータ内部が高温のまま次の試験に進んだことが原因だとわかった。個々の試験の検討では問題がなかったものの、一連の試験として実施した際に発生する問題だった。中尾はさらに突き詰めて調べ、高温の影響が出やすい機種についてのみ、冷却用運転の工程を追加することで問題をクリアした。

他にも、配管を変更したことによって、油の流量が正しく計測できないというトラブルも発生した。一つ改善を試みると、また一つ別の問題が起こる。その度に、それぞれの原因を究明し、解決に導く。これまでならあきらめたり放置していた問題も、「日産600台」という大きな目標達成のためには、どれ一つないがしろにはできなかった。

そして、その小さな積み重ねによって、中尾はついに試験設備2機で日産200台を達成する試験工程を築き上げた。思えば現場をはじめ、さまざまな周囲の人々の力を借りながら進めてきたプロジェクト。ただし、その中心となって前へ推し進めてきたのは他でもない中尾自身だ。プレッシャーは大きかった。だからこそ、ついにここまでこぎ着けたという達成感も大きい。

生産技術という仕事は、アイデア勝負だと中尾は言う。自分の考えやアイデアを取り入れられる自由さがあると。それは同時に、生産技術者としての「引き出し」が問われることを意味する。自身の専門技術分野にとらわれることなく、幅広い分野におけるアイデアや技術を「引き出し」から取り出し、いかに適用させるか。今回の工場再編プロジェクトでも、中尾はその「引き出し」をフル活用して臨んでいる。

2カ月後にはレイアウト変更工事がスタートする。まだまだやらなければならないことは山積みだ。「今日は○台生産できたよ」と誇らしげに報告する現場メンバーの笑顔を励みに、中尾は未来の工場構築に向け、引き続きアイデアを実践するトライ&エラーを繰り返す。

学生時代の私

学部時代は特に何かに力を入れることもなく、のんびり過ごしていました。大学院に進学してからは研究室中心の生活を送っていました。他人に理解してもらいやすい資料作りと話し方に重点を置いて取り組んだ複数回の学会発表が、会社生活でも役立っていると感じています。

入社の決め手

幅広い分野で社会に貢献している川崎重工。私自身も通学の電車等でその恩恵にあずかっていました。就職活動で川崎重工を調べたのはそんな経験から。さらに調べると、幅広い分野で事業展開を行っているため、技術の交流が多いのではないかと考えました。また、自由闊達でチームを重視する社風にも惹かれました。さまざまな分野の人と同じ目標に向かって仕事ができるのではと考え、入社の気持ちを固めました。

チームメンバーから

牛ノ濵 奉紀

精密機械カンパニー
生産本部 生産技術部
生産技術二課
2004年入社

牛ノ濵 奉紀

Tomonori Ushinohama

一つひとつロジカルに問題を解決する頼もしい後輩。

中尾くんは1年目で設備の検討や製作に携わり、主担当として新規設備導入をやり遂げたことや、1人で中国工場へ出張し、期日通りに業務を終え別の問題まで解決して帰ってきたこともあり、とても優秀な新入社員でした。その後も、清浄度改善、インド工場立ち上げ、動力回収システム、自動組立、運転時間短縮など大きな課題がある業務を経験していますが、一つひとつロジカルに問題を解決し、成果を上げてくれる頼もしい後輩です。