挑戦者ファイル

06 森川 英治 ガスタービン・機械カンパニー ガスタービンビジネスセンター資材部 材料課 文学部 英文学科卒 2007年入社

重要素材のグローバル調達。必達納期まで待ったなし。

ひときわ困難な調達素材。
アメリカ・ヒューストンのサプライヤーとハードネゴ。

「この難しい条件下で、いかに調達すべきか・・・」

森川は頭を悩ませていた。森川が所属する資材部のミッションは、ガスタービンエンジンの製作に用いる部品や素材の調達。そこに、コスト、納期、品質がシビアに問われる。ガスタービンの原価の6割は調達コストが占めるため、調達におけるコスト管理は極めて重要だ。また、受注生産であることから納期はあらかじめ決まっていて遅らせるわけにはいかない。さらに航空機用のジェットエンジンともなれば、人を乗せるため品質確保は大前提の要件となる。

ただでさえ条件が厳しいのだが、このとき森川が抱えていた調達素材は、またひときわ困難なものだった。PW4000という民間航空機用エンジンの主要部品となるタービンケースの鍛造素材。まず直径が180cm近くある超大型の鍛造ケースのため、製造できるメーカーが限られている。さらに工程ごとに複数のサプライヤーを行き来しなければならない。そして、年間の調達数量もわずかに数個という少量調達。コスト、納期、品質、どの側面においても制約の多い条件下での調達だった。

森川の調達する素材が遅れれば内作工程に着手できず、納期遅れを招いてしまう。製品自体、非常に高額なものでもあり、納期遅れの影響は甚大だ。何としても期日までに、目標とするコストで調達をしなければ・・・。強いプレッシャーの中で森川は動き始めた。

調達先となる素材メーカーはアメリカ・ヒューストンにある。森川は電話やメールを通じて、納期と価格の交渉に入った。しかし、思うように進まない。少量発注であることから、サプライヤーも乗り気ではないのだ。ついには、電話にも出ず、メールにも返信してこないという事態に陥った。時間はどんどん流れていく。技術部門や製造部門とも調整を図ったが、もはや工程上は待ったなし。一日も早く価格交渉に決着をつけて製作を始めなければ間に合わない。

「どうする・・・?」、森川は自問した。このまま調達部門だけで動いても、らちが明かない。対面を取り繕っていても事態は好転しない。そこで、心を決めた。営業部門を通して、顧客であるアメリカのエンジンメーカーに働きかけよう──。さっそく森川は営業部門へ掛け合い、どれだけ切迫した状態にあるかをあらためて伝えた。良くない情報ほど、関係者と共有する。そうして周囲を巻き込みながら、打開策を実現していく。これまでの経験を通して学んだ、調達業務の極意だった。

事態の深刻さを知ったエンジンメーカーの担当者は、快く協力要請に応じてくれた。森川はすぐにエンジンメーカー担当者とともにヒューストンへ乗り込んだ。渋い表情で迎えたサプライヤーと、直談判の三者協議。この交渉のテーブルで話をつけなければ、プロジェクトは暗礁に乗り上げる。森川らはシビアな交渉を続けた。だが、お互いに歩み寄るも、今一歩のところで折り合わない。そこで森川はエンジンメーカーの担当者と相談し、発注数量を増やす提案を持ちかけた。発注数量の変更は、最終製品の生産数量に関わること。エンジンメーカーを巻き込んだからこそできた交渉だった。その提案は受け入れられ、ついに森川は目標コストでの調達契約を取りつけた。「やった・・・」、ぎりぎりのところで最悪の事態を回避した森川は、いくらかの安堵感とともにアメリカを後にした。

アメリカはちょうどクリスマス。
年内に日本へ届けるために奔走。

しかしこれでは終わらなかった。サプライヤー側の設備故障や製造における不具合の発生が多く、工程がずるずると遅れていく。日本とアメリカという物理的な距離も問題で、テレコンやメールで進捗をフォローするのももどかしい限りだった。そもそも納期に対する意識が薄い海外メーカーだけに、こちらの焦りが伝わらない。そこで森川は再びエンジンメーカーに働きかけ、納期厳守を強力にプッシュしてもらうとともに、社内の製造部門とも調整を図り、生産工程を大幅に縮めてもらうよう交渉した。

クライマックスは年末。いよいよモノが完成しようかという頃、アメリカはちょうどクリスマスを迎えようとしていた。通常なら、仕事納めは23日。24日以降は年明けまでオフだ。しかし、そこまで待てない。森川はサプライヤーと懸命に交渉し、24日、25日と先方の物流担当に休日出勤を要請。なんとか年内出荷してもらう約束を取り付けた。次は物流ルートの確保だ。12月28日には日本の川崎重工の工場に、何としても到着させなければならない。森川は商社から情報を収集し、さまざまなフォワーダー(※1)に依頼をかけ、最も速いルートを検討した。1日も速く、そして確実に日本へ。

森川の臨機応変な対応の甲斐あって、ケース素材は無事に日本へ到着。その後、製造部門の尽力によって、機械加工されたケースは顧客の指定していた期日通りに、1日の遅れもなく納品された。「ふーっ」、森川は一つ大きく息をついた。そしてすぐに気持ちを切り替える。すでに次、また次の調達案件が同時進行している。安穏としている時間はない。

発注数量にサプライヤー数、そして納期設定。調達を取り巻く環境は常に変化している。その変化を瞬間で機敏に感じ取り、あたかも反射神経で動くように迅速に判断してアグレッシブに行動を起こす。たとえ顧客へ働きかけるのがレアケースだろうが、四方八方、考えられるところすべてに手を尽くす。情報の発信源も、行動の起点も、すべては自分。本来、自分から積極的に外へと働きかけるタイプではなかった森川だが、自ら殻を破って進化を遂げた。守るために攻める。調達の醍醐味がわかり始めた。

  • ※1)フォワーダー=貨物利用運送事業者を指す。荷主から預かった貨物を、船舶、航空、鉄道などあらゆる運送手段を利用し、荷受者へ届ける運送アレンジャー。

学生時代の私

学生時代は、オーストラリアの大学で1年間の交換留学を経験したことが大きな思い出になっています。留学当初は異文化に圧倒され、通じない英会話に嫌気がさし、帰りたくなる時もありましたが、現地の学生と授業や飲み会を通して仲良くなり、異文化に対する理解が深まりました。 また、日本製品を現地で多くの人々が利用している様子を目にしたことで、日本の製造業の存在感を実感しました。これがきっかけで自分自身も日本人であることを誇りに感じ、輸出比率の高い日系メーカーで仕事がしたいと思うようになりました。

入社の決め手

採用活動で実際に会って話をした社員の方々が非常に気さくで好感が持てたことと、お聞きした仕事の内容が実におもしろそうだったことが決め手となりました。社員の方の話から、海外メーカーと競い合うだけでなく、ジェットエンジンビジネスのように海外メーカーと共同で開発を行うようなプロジェクトがあることを知り、海外との関係性が非常に多様であることに関心を持ちました。 また、仕事について非常に熱く、それでいてていねいに学生目線で説明してくださった先輩社員の方々と、入社して一緒に仕事がしたいと思い、心を決めました。

チームリーダーから

石原 広助

ガスタービン・機械カンパニー ガスタービンビジネスセンター 資材部 材料課
課長

石原 広助

Hirosuke Ishihara

絶妙なパスを出せる優秀なパサー。

資材部という部署は、外から見ると受け身のルーチンワークと思われがちですが、とんでもありません。指示を待つのではなく、前向きに自分で考えて道を切り拓く人が望ましい。その点、森川くんは誠実かつ前向きに仕事に取り組むタイプ。社内各部門と社外取引先との間に立って、他部門がうまく処理できるように絶妙なパスを出すことができます。これからも、「川崎重工の森川」ではなく「森川」個人として認められるよう、個のキャラクターを高めていってもらいたいと思っています。