Kawasaki Tech-Innovation

炭素繊維強化プラスチックを採用した次世代鉄道車両台車の開発 鉄道車両の歴史を塗り替える革新的な「新世代台車」の誕生。

開発の背景

競合が激しくなる国内外の市場でまったく異なる輝きを放つ製品を。

  • さかのぼること約30年前、川崎重工は当時画期的と評された「軸ハリ式台車」を開発し、国内トップの車両メーカーへと発展してきた。しかし現在、「軸ハリ式台車」はすでに一般化し、国内・海外ともに市場での競合が一層激しくなっている。一方で、省エネを目的とした軽量化が一層求められる中で、30年前から基本構造の変わらない「鉄の台車」ではもはや進化が限界に達していた。

  • そこで、「ここはかつて歴史を塗り替えたように、再びわれわれ川崎重工がドラスティックなフルモデルチェンジを実現し、時代が求める台車をかたちにしなければならない」、そんな使命感をもってプロジェクトはスタートした。狙うは、車両カンパニーの持つ台車設計技術、航空宇宙カンパニーの持つ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の生産技術、技術開発本部の持つ強度・材料技術の3つを統合した、川崎重工でなければ作れない新型台車の開発である。そして完成したのが、まったく新しいコンセプトの新世代台車「efWING」だ。

注目技術

世界に先駆けてCFRPを採用。飛躍的な軽量化と安全性能向上を実現。

「efWING」の革新性は、その素材にある。用いたのは、CFRPという炭素繊維を用いた最先端の素材だ。世界で初めて鉄道車両用台車に採用したこの素材は、鉄よりもはるかに軽量で、かつ強度も申し分ない。ただし加工には高度な技術を要する。そこで強力な味方となったのが、ボーイング787の胴体製造でCFRPの生産技術を確立した航空宇宙カンパニーだった。加えて技術開発本部には強度シミュレーションなどの材料技術面で協力を要請し、まさに川崎重工の総合力でCFRPの活用を実現した。

CFRPを採用したことにより、構造も簡素化できた。従来は、鋼製の側バリと独立したコイルバネで構成されていたものを、efWINGではCFRPバネ一つに機能統合させることにより、部品点数と重量の飛躍的な削減を実現した。また構造的にも、柔らかい弓形状のCFRPバネがシーソーのように釣り合う動きをすることにより、各車輪がレールに与える力が安定し、カーブや分岐における脱線リスクをほぼ半減させることに成功した。

創出した価値

革新的な技術によって鉄道車両の時代を前へと進めた。

世界で初めてCFRPを採用した台車efWINGは、従来の台車と比較し、1両あたり900kgの軽量化を達成した。これにより、1両あたり1年で約9万円の電気代を抑えることができる。100両あたり40年で、3億5000万円ものランニングコストの低減とCO2排出量の削減が可能となる計算だ。軽量化によって線路に与える影響も少なく、メンテナンスの負荷も軽減できる。また、かつてないその斬新な台車デザインは高く評価され、2013年のGOOD DESIGN賞金賞を受賞した。

「軽量化、コスト削減、安全性能向上」の3つを共存させるに至ったefWINGは、革新的な台車として鉄道技術展などでも大きな注目を浴びている。すでに一部鉄道路線で走っているほか、試験走行のオファーは引きも切らない。

30年前、時代を前へと進めた川崎重工は今また、革新的な技術によって鉄道車両業界に新たな時代をもたらした。

Member's Message

台車の常識に、風穴をあけられた。

加村 圭市郎

車両カンパニー 技術本部
台車設計部 efWING設計課

加村 圭市郎
Keiichiro Kamura

当初は期待と不安が折り混ざった心持ちでスタートしたプロジェクトでしたが、いざスタートすると、まったく新しい機構を考案するおもしろさや、さまざまな技術的課題をクリアする楽しさに夢中になっていました。最終的には、これまでとはまったく異なる台車構造を採用したefWINGを完成させ、台車に対する固定概念に対して風穴をあけることができたことに大きな達成感を感じています。

実際、鉄道技術展への出展やお客さまへのプレゼンテーションを通じて、efWINGに対する関心の高さを肌で感じており、今後の開発へのモチベーションが高まっています。開発の手を止めると、すぐに他社も追いついてきます。決してとどまることなく、さらに安全性能を高めたefWINGの開発に向け、突き進んでいきます。

efWING Movie